fc2ブログ

青く輝く月の下で ~Under the shining B.L.U.E. moon~

創作発表板をメインの拠点にコードギアス二次創作やらオリジナル駄文、日々の雑記などを書き散らしていますの
青く輝く月の下で ~Under the shining B.L.U.E. moon~ TOP  >  コードギアス反逆のルルーシュ LOSTCOLORS >  【ナリタ 撤退 戦】

【ナリタ 撤退 戦】

──思えばあの日、自分には予感があったのかもしれない・・・・・・。
そんな風に物思いにふける事が近頃多くなった気がする。
運命の出会いだなどと、少女じみた事を言っているわけじゃない・・・・・・信じているわけでもない。
そう、信じているわけではないのだ。
なのに、どうしても何でもない瞬間にふと『あれは』『これは』『もしかして・・・』と思いが頭の中をめぐりはじめる。
思わずにはいられない。
あれは運命の出会いだったのかと。
考えずにはいられない。
「あいつは私をどう思っているんだろう」
カチャーン。
甲高い金属音がわたしの思考を妨げた。
朝比奈がぎょっとした表情でこちらを見ている。
卜部は手にしていた月下のキーを取り落としたようだ。
なるほど、格納庫の中は音が響く。今の音はそのキーが落ちた音か。
それにしたって──
二人ともどうしたんだ?
不振に思って声をかけようとしたとき、わたしは自分がしてしまった大いなる失敗に気がついた。

【ナリタ 撤退 戦】 (コードギアス反逆のルルーシュLOSTCOLORS 解放戦線篇より)




『惨澹たるものだ・・・』
その日、私の慨嘆はすでに四回を数えていた。
『不意をつかれたとはいえ、なぜこうもあっけなく・・・』
そもそもどうしてこうも容易にブリタニア軍の大部隊に接近を許したのか、事前にそれらを察知することが何故出来なかったのか。
先ほどの地震のごとく巨大な鳴動は山頂付近からの地すべりだと報告があった。
このタイミングで天災なんてことがあるのか? ブリタニアの気象兵器ではないのか? そんな混乱で司令部は右往左往している。
情けないことだと私は吐き捨てた。今はそんな事の確認に時間を費やすような状況ではないだろうに、と。
その地すべりではブリタニア正規軍にも被害はでたようだが、我ら解放戦線側にも甚大な被害が出ていると聞く。
『はたして上層部に的確な現状把握ができるのだろうか』
ようやく暖気の終わった愛機・無頼改をハンガーから降ろし、前進させる。
仙波大尉をはじめ、卜部、朝比奈両中尉もすでに出撃して戦線に加わっていると聞いた。
こんな時に機体に不備が出て出撃が遅れるなんて・・・・・・と愚痴が口をついて出そうになるけど、それは言ったところでしょうがない類の話だ。
「ハッチ開け、千葉凪沙中尉出撃する」
回転刃刀とアサルトライフルを携え、私は機体をハッチ正面まで歩かせる。
二重に降ろされた扉がゆっくりと開き始める。
機体の管制を構内モードから戦闘モードへと切り替える。
高機走駆動輪を降ろした。
「出撃、どうぞ!」
管制官の掛け声と同時に私は無頼改を外の世界へと躍らせるのだった。
木々と山肌によってカモフラージュされた出撃ポートの付近にはまだ敵機は迫っていない。しかしそれも今のうちだけだろう。
素早く索敵チェックモニターに目を走らせ、ファクトスフィアを展開させる。
敵はいない。有視界とレーダーの双方で進行方向の安全を確認。
グン。
アクセルを踏み込んで無頼改の速度を上げる。
私は僚友たちと共に死守を命じられたポイントへ機体を奔らせていく・・・・・・。

戦闘はすでに各所で終わりを告げんとしているように見えた。
黒煙と爆音、味方の劣勢を報せる警報が四方八方から聞こえてくる。
──目標地点まではあと1000。
司令部とのデータリンクはまだかろうじて生きている。無頼改のノイズジャミングもまだ効果を保っているようだ。戦術支援モニターの誘導を確認しつつ私は進み、敵機と鉢合わせした。
「こんなところにまで敵機がいる?!」
驚愕しつつも私は構えてた無頼改のライフルを一斉射し、敵機──サザーランドを牽制する。
サザーランドは巨大な対ナイトメア戦を企図した電磁ランスを装備していた。正面からの近接戦闘はこちらに不利だ。
コントロールスティックを傾けて急制動をかけると共に高機走駆動輪に逆回転をかける。ギャギャーンとタイヤが地面を激しく削る音がスピーカーから飛んでくる。
いわゆるドリフトのような形で私の無頼改は歪な旋回軌道を描く。
そしてライフルを斉射。さらに牽制をかけて間合いを調整する。
ここまでの侵入を許したということは、中腹の友軍は壊滅したと言うことだろう。
ナリタ中腹まで攻め込まれ、ろくに迎撃行動もとれぬままに撃破されていく解放戦線兵たち。
先の地すべりでブリタニア側にも大きな損害が出てるとはいえ、戦力の差は歴然であると予想できる。
出撃前の戦況報告の時点ですでに戦闘と呼べる状況ではなく、この戦場はブリタニア軍による掃討・・・・・・殲滅戦の様相を見せていた。
だけど──!
無頼改の放った銃弾をサザーランドは軽々と回避する。だけど慌てない。これは回避させた弾なのだ。
回避運動に入ったサザーランドは無頼改に対して横に大きく迂回するような機動をとるが、それこそが狙い。
アクセルをさらに強く深く踏み込む。一気にサザーランドとの間合いをつめる。各部間接と高機走駆動輪を強化してある無頼改だからこそできるオーバーブースト。
背後を取った。
私は躊躇なく回転刃刀を真一文字に振った。腰の部分で両断する。
哀れ、サザーランドは両断された上半身、下半身共々なかよく山肌を落下していった。
ビーッ!
警告音が高揚した私の精神をつんざく。
落ちていくサザーランドの僚機であったのか・・・・・・、新たなサザーランドが二機迫ってきている。その背後にはさらに三機。
いくら強化された無頼改といえども性能面でサザーランドはその上をいく。まして単機で抑えられる数ではない。牽制の射撃を行いつつ無頼改を後退させる私。
慌てる必要はない。
速すぎず、遅すぎず微妙な速度を保って誘導する。そうだ、戦術支援モニターに表示された目標地点までの距離はほぼ0になっている!
その時だ、
山肌の上面から雨のような銃弾が接近中のサザーランド三機に降り注ぐ。
不意を衝かれた三機はそれをまともに受け、地面とキスをしつつもんどりうって転がっていった。
後詰の友軍の危機に動揺したのか前方の二機の動きが止まる。それを見逃すような私ではない。
無頼改の銃口は的確に狙いを定め、確実にその二機を撃ち抜いていく。
──無事か?
無線が入る。それは質問ではない、そうであることの確認でしかない。
「問題ない」
短くそう伝え、私は三機の無頼改、僚友たちの側に愛機を寄せた。
「四聖剣がそろったな」
仙波大尉の声に頷く。
そう、私の名は千葉。千葉凪沙。『四聖剣』の千葉凪沙。


「どうやら黒の騎士団が介入してきたみたいだね」
戦場とは思えない軽い調子の朝比奈の声が三人私たちの耳を打つ。
不確定の情報として黒の騎士団が戦域に現れたという報告は聞いていたけど、まさかと思っていた。
「アマチュアのゲリラがこの戦場に介入? 冗談にもほどがある」
「そうは言うけどさ、これってチャンスなんじゃない?」
やれやれ。朝比奈はいつもどおりのお気楽加減のようだ。だけど一理はある。
「中佐もこれを好機と考えておられるそうだ」
仙波大尉がその低い落ち着いた声で語った。
「我らはこれより友軍の脱出経路を開くため中佐の指揮下に入り、S14に向かう」
中佐も無頼に搭乗、合流されるそうだ。と卜部が補足した。
「最初から中佐殿が指揮をお取りになっていれば・・・・・・」
おもわず口をついて出る言葉。三人は私に何も答えない。
同じ思いなのだ。同じ思いであるからこそ、あえて口に出さない。
私たちは止めていた足を働かせ始める。木々が茂る山の中を合流地点を目指し愛機を走らせていくのだった。
敵は武人として名高いコーネリア靡下の正規軍。
予測不可能な事態にあって、その受けた甚大な被害にもかかわらず、すでにその態勢を持ち直しつつあった。
『次第に囲まれつつあるのか・・・』
私はその不利を認めた。
友軍の撤退はかなりの無理難題だと思う。
戦線をズタズタにされ、指揮系統もズタズタにされ、ましてその指揮を行うはずの司令部はさっさと撤退を完了させている。
なるほど、我々は自らが逃げ出す為の囮ということか。
またしても中佐──藤堂さんがその後始末をする結果。
耐え難い。
それが私には耐え難いのだ。

S14の地点に向かうまでの間もブリタニア軍部隊との遭遇は間断なく続いた。相互に連携をとり、私と朝比奈とで六機目のサザーランドを撃破する。
「朝比奈、弾薬の残りは?」
「これで予備弾薬は終了ってね」
アサルトライフルの弾倉交換を終えて朝比奈は答えた。
「わたしはあと一斉射で空だ」
と、朝比奈がアサルトライフルを私にむかって放り投げる。
まるで人間のようなスムーズな動きで受け取り、もはや残弾のないアサルトライフルを放り投げる無頼改。
私は受け取ったライフルを無頼改のマニピュレーターに握らせ、FCSの接続チェックを行う。安全装置の解除を行って使用可能にする。
そして耳にしたのは敵機接近の警告音。本当に息をつく暇もない。
迫るのは単機のサザーランドだった。
敵機の進行方向に向けて私はライフルの弾を散らす。
朝比奈ならばその程度でも十分な援護になる。
そのすべるような機動で彼はサザーランドとの間合いを詰め、敵機のコクピットに回転刃刀を突き立てた。
その一連の動作は天賦の才というものが現実に存在しているということを物語っている。
「これで本日は撃墜八ってね。もうじき十機か。あと五か六機くらいいけるかな?」
そうこうしている間も敵機接近の警報は鳴りっ放しだ。
私たちは藤堂さんたちの方へサザーランド数機が向かっている事を確認しその愛機を向けた。
その進路上に今度は二機のサザーランド!
この狭い空間の中に、いったいどれだけの敵機がひしめいていると言うのだろう。
慌てず、その手にもったライフルを構え直して銃弾を叩き込む。
弾痕を刻み糸の切れた人形のように崩れ落ちるその横で、朝比奈の無頼改もその刀で敵機を撃破していた。
速度は落ちていない。S14地点はすぐそこだ。
木々の間を縫って私たちは走る。
「中佐!」
敵部隊の包囲は完成しつつある、しかしそれでもなお戦域にとどまり友軍の撤退を援護し続けるような男がどれだけいるだろうか?
いるのだ。
それが藤堂鏡志朗であり、それに従うのが私たち四聖剣だ。
また一機、撃破したところでついにアサルトライフルの弾がきれた。
それを捨て去り、左マニピュレーターに持たせていた回転刃刀を両手に持ち直す。
S14地点到着。私は藤堂さんの傍らに機体を寄せた。
「中佐、潮時です。われわれも撤退を」
敵部隊は周囲300から500と間合いを取って包囲を完成させつつある。このままでは突破は困難になると思えた。
「よし、前方の敵機を崩し、突破を図るぞ」
だけど迷いのないその一言。その言葉に私の心は奮い立つ。
その時、三時の方向から爆音が響いた。
「三時!」
短い藤堂さんの言葉に私たちは瞬時に反応する。
レーダー上ではそちらに配置されていたサザーランドは五機。しかしその姿が二機にまで減っていた。
代わりに増えていた信号は所属不明の無頼。
IFFには登録されていない無頼。解放戦線のパイロットではないということだ。
異変に気がついた両翼のサザーランド数機があわてて移動し始めるけど、その動きは異常事態にただ驚き、ただとりあえず対応したといったように見えた。
「そんなおっとりがたなで駆けつけたところでっ」
卜部が吼える。
敵機は仙波大尉と卜部、私と朝比奈の連携であっさりと撃破されていった。
藤堂さんもまた二機のサザーランドを一刀のもとに屠っている。
気が付けばその眼前には三機のサザーランドを撃破したとおぼしき無頼。
「黒の騎士団とお見受けする。助太刀かたじけない」
オープンチャンネルで所属不明の無頼に語りかける藤堂さん。
──そうか、黒の騎士団・・・・・・同じ反ブリタニア勢力として助勢に入ったということか?
しかし周囲に他の機影はない。たった一人で援護に来た?
私には安堵の気持ちよりも不審の方が先に立った。だけど藤堂さんは気にしていないのか、パイロットに向かって語りかけている。
「私は日本解放戦線の藤堂鏡志朗だ」
「!」
息をのむ声が無線から聞こえた。その声はずいぶん若いように感じ取れた。
「僕は・・・・・・ライ」
若い男の声。少年の声といっても不思議はない、よく透るイヤに落ち着いた声だった。
「ライ・・・・・・。覚えておこう」
藤堂さんはライと名乗ったその男に興味を覚えたのか、その名を繰り返す。
ちょっとムっとした。
「中佐、進路啓開しました」
残された時間は少ないのに、と通信に割り込んで私は言う。
上官に対して無礼ではあるが、包囲にかかっている残りの敵が終結しては元の木阿弥ではないか。
それでも藤堂さんはライと名乗った少年兵に声をかける。
「君はどうする?」
「こっちも味方と合流する」
短く答えるパイロットに藤堂さんはそうか・・・と答えた。武運を祈るとも付け加えて。
「そちらこそ幸運を」
お互いにその機体を転進させる。
会話はそれで終了だった。
───黒の騎士団。若いパイロットのライ・・・・・。
森林地帯で無頼を走らせながら黒の騎士団のパイロットのことを考えていた。
また会うことがあるかもしれない。不思議と確信めいたものが私にはあった。それがどんな形になるのか・・・・・・それはわからないにしても。
「さっきのパイロット、なかなかの使い手のようでしたな」
「使い古しの無頼でサザーランド三機を屠る。けっこうな腕のようだ」
仙波大尉の一言に卜部が相槌を打つ。
「あぁいう腕が立つ子がいれば、僕も少しは楽が出来るんですけどね」
朝比奈はいつもとかわらず軽口を叩く。
「生きていればまた会うこともあるだろう」
藤堂さんの一言でその井戸端会議は終わった。
そうだな。生きていれば、またどこかで。
そして、その言葉の通り、生き残った私たちは再びその青年と出会うことになるのだった。


腹を抱えて笑っていた二人が笑い声をあげることはもはやない。
口にタオルをねじ込んでやったからだ。
「どうしたんです・・・・・・? 中尉」
くすんだ銀髪の青年が待機所に入ってきたのはちょうどその時だった。
「なんでもないっ!」
再びにやにやし始めた朝比奈の脛を蹴って黙らせ、顔を「?」でいっぱいにしたライを背中に私は格納庫を逃げ出した。
「中尉~?」
ライはまだとぼけた声で私を呼んでいる。
『まったくなにもわかっていないんだ。こいつは』
ガシガシと床を蹴って私は廊下を行く。
うん、そうだ。ライが悪いな、間違いなくこいつが悪い! 赤面している自分を自覚しながら私は総てをライのせいだと思うことにした。
こんな風に悶々と堂々巡りのことに思い悩むのはみんなアイツのせいだ。おかげで朝比奈たちに酒飲み話のネタを与えてしまったじゃないか!
『まったくあいつはなにもわかっていないんだ』
だけど、私も何もわかってはいないのだ。だがそれでいい。これからわかっていけばいいのだ、と思う。
『この出会いが本当に運命なのか、どうなのかなんて』

にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

プロフィール

HANA子

Author:HANA子
看護師をやってる似非腐女子

夢は
F22ラプターに乗った王子さまか、
JAS39グリペンに乗った皇子さまが
迎えにきてくれること
ついでに言わせてもらえば、
メビウス1はうちの婿

イメージ的にアーニャならしい2×歳

ブクログ
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村 

ついったーはじめました

バナー
バナーです。リンクなどに使っていただけたら幸いです。