鳥の鳴く声が聞こえる。
リビングの向こう、カーテンの隙間に薄い光が見えた。
朝がまた来た。
「なんでこんなことになっちゃったんだろうな」
何度目かもう数えていないその言葉を繰り返すユウ。夜が明ける程の時間が経ち・・・・・・けれど千歳は部屋に閉じこもったまま出てこようとはしない。
部屋に閉じこもって泣いて過ごしたいとはユウとて思わないでもなかった。しかしその誘惑に身を任せることを彼はしない。
できなかったと言い変えてもいい。
『わたしは、わたしはお兄ちゃんの妹じゃないッ! ホントは・・・・・・ホントの兄妹じゃないって、知っているんだからァッッ!!』
不破千歳は一緒に育ち、一緒に暮らしてきた家族──たった一人の血を分けた妹。そのはずだ。そのはずだった。
普通の、当たり前の家族だったと思う。天才少女と呼ばれ、他人と壁を作りがちなところはあったにしろ、それでも……
それでも、彼女は不破優作にとって当たり前の少女であり、妹であり、家族だった。そう思っていて、それを疑いもしなかった。疑おうなんて意識が働いたこともなかった。
だけど彼女は確かに言ったのだ。自分とユウは本当の兄妹ではないと、家族ではないと言ったのだ。そして、自分だけがそれを知らされないできたかの様にユウに告げた。
ユウにはなんのことだかさっぱりわからなかった。知らなかったのは自分の方だと絶叫したい気分だった。頭の中で言葉が渦を巻き続けている。ただただ同じ言葉ばかりが繰り返し響いてくる。
「なんでこんなことになっちゃったんだろうな」
同じ言葉を繰り返すユウを慰めるかのように、寄り添うカイアが彼の頬を舐めた。
ザラザラの舌の感触が心地いい。
「大丈夫、大丈夫だよカイア」
そう言いながらユウは、止めはしないでカイアのしたいように身を任せている。
ふと気が付いたことがある。
『あぁ、あの時と同じだ』
あの時もカイアがユウの頬を舐めていた。
半年前のあの夏の日も──同じように。
ARTIFACT LEGACIAM 第二話 猫とマシン part1 ◎前回のお話はこちら!
第一話 聖夜の告白 part1 第一話 聖夜の告白 part2