阿藤忍は決して不遇な青年であったわけではないはずだ。
それは彼を知る人々の総てが口を揃えて主張することだろうと思う。
彼──阿藤忍は“持てる者”であったはずだ、と。
しかし、彼自身は自分の事をどう感じていただろうかとも思う。
彼にとって「恵まれている」ということと「満ち足りている」ということは、決して同義のことではなかったのだ。
彼が愛するモノは家族ではなかったのだ。父と母と妹。
そして──わたし。
遥かなる夢の都に彼は辿りつけただろうか?
今、彼は満ち足りているだろうか?
良家の生まれであり、これまでも──これからも人生は順風満帆であるはずの青年はある日忽然とその姿を消した。
失踪した婚約者・阿藤忍の行方を探す“わたし”。何の手がかりも得られずに途方に暮れる彼女の手元にある日小さな小包が届く。
“カダス”と読むらしい見知らぬ土地よりの荷物。その荷札に書いてあったのは阿藤忍の名と失踪する前日の日付だった。
小包に入っていたのは丁寧に布で包んだ小さな銀色の鍵一つだけ。
“わたし”は知っていた。
阿藤忍がもはや現実の世界には何一つ希望など持っておらず、ただひたすら夢の世界に赴くことを願っていたことを。
彼から贈られた“銀色の小鍵”それが阿藤忍なりの謝罪であることを“わたし”はやがて知ることになる……。
表題作「扉を開けて」の他、市営団地に潜む全く同じ顔をした奇怪な子どもたちによる恐怖を描いた「大好き五つ子」。
霧深い山中の廃村で若者たちが引き起こした淫靡な惨劇を見てきたことのように語る老婆の「霧に潜む悪魔」。
事故で死んだ両親を思い続ける少年とその少年を引き取った叔母を襲う怪異「天までとどけ」。
ある日隣接する校区の小学生たちの間で“勃発”した本職顔負けの規模の本格的な“戦争”に翻弄される親達を描いた「キッズウォー」。
など、当たり前の日常から少しだけ乖離した世界の恐怖を描いた五編をお送りする。
創発ホラー文庫夏の新刊:【扉を開けて】著者:青井HANA子
創作発表板@にちゃんねる掲示板 【嘘予告】創発予告ネタスレ【ワンシーン】投下分。
なにも考えんと適当に思いついた話をぱぱーっと書くスレなわけで、まぁ……実際に書くことはないんだろうなぁと。
「銀の鍵」「カダス」
これにピーンと来た人はとりあえずお友達になれそうです。
そうです。クトゥルフ神話ですね。『幻夢境カダスに夢を求めて』御台「ハワード・フィリップ・ラブクラフト」の『ランドルフ・カーター』モノから拝借してまいりました。
宇宙的恐怖云々とそればかりのラブクラフト御台ですが、彼の理想や夢が凝縮された『ランドルフ・カーター』モノの詩的なお話ってけっこうキレイな感じがしません?(読み手が知ってる前提でのお話)
あとの4つは……言うまでもなく昼ドラのタイトルからホラーっぽい話を連想してでっちあげたお話です。
が、
なんかこっちの方が面白く書けそうでヤダなwww

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